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肝機能障害

肝機能障害とは

健康診断で肝機能が異常と指摘されたことはないでしょうか。
血液検査で測定する項目としては「AST」、「ALT」、「ALP」、「γ-GTP」、「総ビリルビン」があり、そのいずれかが高値で肝臓の機能が障害されている場合に、肝機能障害といいます。

肝臓の役割

肝臓は、身体のみぞおちよりやや右側、肺・横隔膜の下に存在していますが、人間の身体の中で様々な役割を担っています。

タンパク質の合成

  • 胃や腸で分解された栄養素は主に腸で血液中に吸収されて、肝臓へ至ります
  • 肝臓で栄養素はタンパク質へ合成、アルブミンや出血を止める蛋白(凝固因子)が作られます

解毒作用

  • 薬物や毒物、アルコールなど身体によくない物質を解毒する
  • タンパク質が分解されて産生されるアンモニア(NH3)を分解して尿素へ変えます

胆汁の産生

  • 肝臓は、タンパク質を分解、脂肪を消化・吸収させやすくしている胆汁を産生・分泌する
  • 胆汁はビリルビン(赤血球のヘモグロビンが分解されて生成される黄色い色素)を含んでいます

肝臓の機能が悪くなると、体の中で様々な症状が生じます。
タンパク質は体の材料であり不足すると肌荒れや抜け毛の増加、疲れやすくなり、むくみの原因にもなります。
出血したときに働く物質で有名なのは血小板ですが、タンパク質が不足すると凝固因子が足りなくなり、血が止まりにくくなることがあります。

肝臓の解毒作用が肝硬変などで低下すると、アンモニアが肝臓で蓄積され意識障害が生じることがあります。

胆汁が少なくなると脂肪やタンパク質の消化・吸収が低下し、肝臓や胆管(胆汁が通る管)で障害が起こると胆汁の流れが悪くなり、高ビリルビン血症を呈し身体が黄色くなる黄疸や痒みが生じます。

肝臓の機能を調べるための血液検査

「AST」と「ALT」

  • ASTとALTは肝臓の細胞に含まれる酵素で、肝臓がダメージを受けると上昇します
  • ASTは、肝臓以外にも心臓・筋肉・腎臓・脳・白血球などにも存在します
  • ALTは、ASTと異なり肝臓に多く存在します

「γ-GTP」と「ALP」

  • γ-GTPは、胆道(胆汁の通り道)で産生される酵素で胆汁に含まれ、胆道系や肝臓が傷害されると上昇します
  • 肝臓以外にも、腎臓・膵臓・心臓・肺などにもγ-GTPは存在します
  • ALPは、リン化合物と呼ばれる栄養素を分解する酵素で胆汁に混じり排出されるため、胆汁の流れが悪くなると上昇します
  • 肝臓以外にも、骨・胎盤・腸・腎臓にもALPは存在します

総ビリルビン(Bil)

  • ビリルビンは、赤血球のヘモグロビンが分解されて生成される黄色い色素です
  • 肝臓で処理されると直接ビリルビン(D-Bil)と呼ばれ、肝臓から胆汁中に排泄されますが、胆汁の流れが悪くなると上昇します

どの検査結果が上昇しているか、または複数の項目が上昇している場合によって、考慮しなければいけない疾患が異なります。

検査結果に応じた肝機能障害の原因

「AST」、「ALT」が上昇

ASTやALTが上昇を認めたら、まずは肝臓以外の原因がないかどうか確認することが大事です。
前項で記載しましたが、ASTは肝臓以外にも存在しているため、ASTだけが上昇していた場合は特に注意が必要です。
また、原因を見逃さないために、服薬している薬、アルコール摂取量、家族歴、渡航歴、生活習慣病の有無なども確認します。

肝臓以外が原因
  • 甲状腺機能亢進症・低下症
  • 溶血(赤血球が何らかの原因で壊れること)
  • 筋肉由来(筋トレ後、横紋筋融解症など)
  • 心筋梗塞(腎梗塞)
肝臓が原因でAST、ALTが上昇する疾患
  • ウイルス性疾患(B・C型肝炎、伝染性単核球症など)
  • 薬剤性
  • アルコール性
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
  • 自己免疫性肝炎
  • 胆道閉塞疾患
  • 肝臓の虚血(肝臓の血液が不足していること)
  •  

「γ-GTP」、「ALP」が上昇

γ-GTPとALP両方の上昇を認めた場合は、胆汁のうっ滞(肝内と肝外の両方)を考慮します。
その場合、原因精査のためには腹部エコーや腹部CTなどの画像検査を行い、胆汁がうっ滞する原因を確認します。 γ-GTPが正常値でALPのみが上昇していた場合は、肝疾患以外を疑います。
ALPは肝臓以外に腎臓、骨
、小腸、白血球、胎盤に存在しており、骨折や骨腫瘍、成長期、妊娠などでALPは単独上昇します。

ALPのみが上昇
  • 骨病変(骨折や骨腫瘍)
  • 成長期(小児)
  • 妊娠
γ-GTPとALP療法が上昇
肝疾患
  • 薬剤性
  • 腫瘍性(肝細胞癌、転移性肝癌)
  • 原発性胆汁性胆管炎(PBC)
  • 原発性硬化胆管炎(PSC)
肝疾患以外
  • 肉芽腫性病変(結核、サルコイドーシス)
  • 甲状腺機能異常症
  • 悪性リンパ腫
  • 膠原病(Still病や巨細胞性動脈炎などの膠原病)

また、ASTとALTが上昇していないにも関わらずγ-GTPが軽度上昇していた場合は、NAFLD(非アルコール性脂肪肝)を疑い検査することもあります。

総ビリルビン(肝機能障害では主に直接ビリルビン)

ビリルビンが上昇していた場合、まずは直接ビリルビン、間接ビリルビンのどちらが優位に上昇しているかを確認します。
間接ビリルビンは、溶血、体質、進行した肝硬変・肝不全で見られます。その中でも、Gilbert症候群は体質性黄疸で最も多く、頻度は人口の2~7%で過労・ストレス、絶食時などに黄疸が出現しますが、自然に軽快します。
直接ビリルビンの上昇は、閉塞性黄疸(胆管結石、膵炎、膵癌・胆管癌)、肝実質性黄疸、肝内胆汁うっ滞型黄疸、体質性などが原因で生じますが、胆管拡張の有無を確認するために腹部エコーや腹部CTでの精査を必要とし、自覚症状と伴っている場合などは速やかに専門の医療機関へ紹介とします。

間接ビリルビン上昇
  • 溶血(溶血性貧血)
  • 体質性黄疸(Gillbert症候群など)
  • 輸血後
  • 進行性の肝硬変・肝不全
直接ビリルビン上昇
  • 閉塞性(胆管結石、腫瘍、膵炎など)
  • 肝実質性(ウイルス、自己免疫、薬剤、腫瘍など)
  • 館内胆汁うっ滞型(薬剤、アルコール、PBC、PSC)
  • 体質性黄疸

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