肺気腫(COPD)
肺気腫(COPD)とは
肺気腫は、たばこ煙を中心とする有害物質を長期的に吸入することで発症する呼吸器疾患です。
肺は呼吸をするために大切な役割を果たしており、鼻や口から吸いこんだ空気は気管に入ります。
気管は左右の気管支へ分かれ、さらに細かく分かれて肺胞という空気が入った小さな袋状の構造へ至ります。
肺胞は息を吸うと膨らみ、息を吐くとしぼんで中の空気を外へ押し出しますが、吸い込んだ酸素と血液中の二酸化炭素を交換する役割を担っています。
たばこ煙などの有害物質が長期にわたり肺を刺激し炎症が生じると、気管支が細くなり、肺胞の壁が破壊されます。
肺胞の壁が壊れることで肺胞が伸び縮みしづらくなり、更には気管支が細くなることは空気の通り道が狭くなることであるため、肺から空気を吐き出すことが大変になります。
その結果、酸素を取り込みづらくなり、息苦しさなどの症状が出現します。
肺気腫を発症する人の多くは喫煙者です。60歳以降で発症し、年齢を重ねるにつれ頻度は増加します。
男性に多く、40歳以上の日本人の約10%が肺気腫だと言われています。
喫煙の量を示す国際的な指標として、喫煙指数Pack-yearsがあります。
「Pack years=(1日の喫煙本数/20本)×喫煙年数」
肺気腫の発症率は20Pack-yearsの喫煙者で約20%、60Pack-yearsの喫煙者で約70%になると言われており、20年以上1日1箱以上のタバコを吸っている方で呼吸器症状を認める方は、肺気腫の可能性が高いと考えられます。
肺気腫の症状
肺気腫の症状として主なものは下記です。
- 慢性の咳(3か月以上続く)
- 痰
- 喘鳴(ぜーぜー,ヒューヒューといった呼吸の音)
- 労作時の呼吸困難
- 体重の減少
- ばち指(指先の膨らみ,肺癌の合併を疑います)
気になる症状がある方は下記の表を見てみてください。
総合点が4点以上で肺気腫(COPD)にかかっている可能性があるため、精査を行うことをおすすめします。
肺気腫(COPD)の検査・診断
肺気腫の診断には以下のような検査を行い、総合的に判断します。
胸部レントゲン検査
肺の過膨張所見や横隔膜の平坦化などを確認し、肺炎や肺癌などの合併症の有無も確認します。
胸部CT検査
軽度の気腫性変化から、他の肺の合併症がないかどうかを調べます。
スパイロメトリー
肺の機能を調べる検査で、肺気腫では気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVCが70%未満となります。
FEV1:最大に息を吸った後、最初の1秒間に吐き出された空気量
FVC:最大に息を吸った後、最大限吐き出された空気量
他にも血液検査で好酸球数などを測定、他の疾患を除外するために心電図や心エコーなどを行うことがあります。
肺気腫(COPD)の治療
肺気腫の治療は、以下のようなものがあります。
禁煙
禁煙は肺気腫の治療の中で、最も大切です。肺機能をこれ以上悪くしないことだけではなく、急性増悪や癌・動脈硬化の予防にもつながります。
予防接種
肺気腫の方は、健常な人より呼吸器感染症が重症化するリスクが高いです。そのため、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種を推奨しています。
薬物療法
肺気腫で用いる治療薬としては下記などの種類があります。
- 長時間作用型抗コリン薬(LAMA)
- 長時間作用型β2刺激薬(LABA)
- 吸入ステロイド(ICS)
肺気腫の治療の中心は気管支拡張薬(主に吸入薬)であり、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)が最も重要な薬剤です。
LAMAは気管支を拡張することで、呼吸を楽にして呼吸機能を改善させます。
ただし、緑内障(閉塞隅角緑内障)には禁忌、排尿障害を伴う前立腺肥大症には注意を要します。治療開始前には、患者さんが通院している眼科へ相談の上で処方とします。
LAMA単剤ではコントロールが不十分な際には、長時間作用型β2刺激薬(LABA)を追加します。また、喘息合併例や末梢血好酸球数が300/μL以上の場合は吸入ステロイド(ICS)の併用も検討します。
それ以外にも、去痰剤や労作時の息切れ時に備え短時間作用型β2刺激薬(SABA)を併用することもあります。
栄養管理・運動療法
肺気腫の方は健常な人よりも多くのエネルギーが必要となります。そのため高エネルギー食、高たんぱく質を意識し、過剰な炭水化物摂取を避ける食生活が勧められます。
また、定期的な運動、有酸素運動(ウォーキングなど)や筋力トレーニングに関しては、無理をしない範囲で行うことが肝要です。
在宅酸素療法(HOT)
呼吸機能低下に伴い低酸素血症が続いている方に対しては、在宅酸素療法の適応があります。
自宅に酸素濃縮装置を設置して、自宅で酸素を吸入できるようにする治療方法です。外出時には携帯用ボンベや携帯型酸素濃縮装置を使用します。
自宅や外出先で酸素を吸入できることで呼吸苦を緩和し肺や心臓の合併症を防ぎ、活動範囲を広げ日常生活の質を向上させることができます。
上記の治療を行う目的は、症状を緩和し生活の質を改善し、病気の進行を抑制、寿命を延ばすことです。
また、呼吸器症状が悪化した場合は追加の治療を行います。原因としては呼吸器感染症(ウイルス性・細菌性上気道炎や肺炎)が多く、心不全や心房細動などの不整脈等でも肺気腫は急性増悪を来たします。
急性増悪の原因となった治療を行いながら、SABAの回数増加や抗菌薬、経口ステロイドを使用することがあります。
