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脂質異常症

脂質異常症とは

血液中には、コレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸、リン脂質の計4種類の脂質があります。
このなかでも、悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪(TG)が過剰、または善玉コレステロール(HDL)が少なすぎると、脂質異常症と診断されます。
特に悪玉コレステロール(LDL)は単独でも強力に動脈硬化を進行させるため、メタボリックシンドロームの有無に関係なく、LDLの値に注意する必要があります。

原因

脂質異常症の原因は、食生活の乱れや運動不足、過度な飲酒、遺伝的要因によるものや、糖尿病・甲状腺機能低下症など、他の病気が原因の場合があります(二次性脂質異常症)。
現代人は、インスタントラーメンやケーキなどの飽和脂肪酸の多い食事を摂りすぎるなど、食生活の欧米化により痩せている人、標準体重の人など、体型に関係なくコレステロール値が高い人の割合が増えています。
女性は更年期を過ぎると女性ホルモンが減少するため、HDLコレステロールが基準値より高い、高コレステロール血症を発症しやすくなります。

症状

脂質異常症は自覚症状が乏しく、多くは健診で指摘されます。
症状がないから油断してしまいがちですが、動脈硬化が進行すると狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの重篤な病気に繋がることがあるため、放置せず生活習慣の改善や内服療法を行うことが大事です。

脂質異常症の検査・診断

二次性の脂質異常症も考慮し血液検査(血算、腎機能、肝機能、甲状腺機能、糖尿病など)を行い、LDL、TG、HDL値から下記の表を基に診断します。

糖質異常症の診断基準
項目 数値 診断
LDLコレステロール 140mg/dL以上
120~139mg/dl
高LDLコレステロール血症
境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
TG(トリグリセライド) 150mg/dL以上(空腹時採血)
175mg/dL以上(随時採決)
高トリグリセライド血症

N

on-HDLコレステロール

170mg/dL以上
150~169mg/dL
高non-HDLコレステロール血症
境界域高non-HDLコレステロール血症

(動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版を一部改変)

治療

脂質異常症の治療は、大きく分けて「生活習慣の改善」と「薬物療法」の2つに分けられますが、食生活など生活習慣の改善が最も大切です。

食事療法

まずは食生活を改善することが第一です。

食事療法の目標
  1. 禁煙
  2. 適正体重の維持
    (BMI 25未満時は適正体重維持、BMI 25以上時は摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくする)
  3. 炭水化物、たんぱく質、脂質をバランスよく摂取する
  4. 食物繊維(野菜、海藻、キノコ)、魚、野菜、果物の摂取を増やす
  5. 飽和脂肪酸(動物性の脂肪、バターなどの乳製品、お菓子など)を控える
  6. アルコールの過剰摂取を控え、休肝日を設ける
  7. 塩分摂取を制限し、1日6g/日未満を目標とする

二次予防(冠動脈疾患またはアテローム血栓性脳梗塞の既往がある人)については、生活習慣の是正とともに薬物療法を考慮しますが、一次予防(脳・心疾患の既往なし)の場合はまずは生活習慣の改善でコレステロール値が低下するかどうかを見ていきます。

運動療法

  1. 中等度の有酸素運動を週3回以上、合計150分以上行う
    • ウォーキングはいつでも、どこでも、ひとりでもできるが長続きするように自分のペースで
    • 膝や腰が痛い人は、プールで歩いたり泳ぐと負担が少ない
    • 軽い運動からはじめ、少しづつ運動量を増やす
    • その日の体調に合わせて、無理をしないようにする
  2. レジスタンス運動を週2~3回程度行う
    (筋肉に負担をかける運動、スクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操など)

適度な運動を続けていくことで中性脂肪(TG)を低下させ、また悪玉コレステロール(LDLコレステロール)も低下、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を上昇させることができます。

薬物療法

生活習慣の改善(禁煙や食生活の見直し、適度な運動など)を数か月続けても効果がみられない場合、または二次予防(冠動脈疾患またはアテローム血栓性脳梗塞の既往がある人)の際は薬物療法を考えます。
下記の表は当院で処方する薬剤の使用例です。

薬効 種類 製品名 ジェネリック
LDL-C低下作用 スタチン
(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
リピトール
クレストール
リバロ
アトルバスチタン
ロスバスタチン
ピタバスタチン
小腸コレステロール
トランスポーター阻害薬
ゼチーア エゼチミブ
TG低下

HDL-C上昇
フィブラート系 リピディル
パルモディア
フェノフィブラート
多価不飽和脂肪酸 エパデール
ロトリガ

イコサペント酸エチル

※LDL-C(LDL-コレステロール), TG(トリグリセライド), HDL-C(HDL-コレステロール)

動脈硬化性疾患(心筋梗塞や狭心症、脳梗塞など)を予防または再発させないために大事なことは、LDLコレステロールを目標値まで低下させることです(リスクに応じて目標値は異なります)。
心血管疾患のリスクを低下させ予後を改善させるとわかっている薬剤はスタチンですので、まずはスタチンを使用します。スタチンはLDLコレステロールを下げる効果が強い薬剤です。
スタチン系薬剤でLDLコレステロールが目標値まで下がらない場合については、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(ゼチーア)を併用します。これでも不十分な場合に限り表には記載していませんが、PCSK9阻害薬のエボロクマブを使用することがあります。
また、高TG血症(中性脂肪)においては非薬物療法が特に重要ですが、それでもTG値がとても高い場合にフィブラート系や多価不飽和脂肪酸を用います。
薬剤の副作用としては、使用頻度が高いスタチンに関連した肝機能障害、筋肉痛(横紋筋融解症)に特に注意を要します。

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