腎性貧血
腎性貧血とは
赤血球は骨の中の骨髄で造られますが、「腎臓」も赤血球を造る上で大きな役割を果たしています。
腎臓の組織が貧血で酸素不足の状態になると、造血を促すホルモンである「エリスロポエチン」を産生します。
しかしながら、慢性腎臓病などで腎臓の機能が低下すると、エリスロポエチンが少なくなり、赤血球をつくる力が低下して貧血となります。
腎性貧血が高度の場合、左心不全や心肥大のリスクが増大するため、適切な治療が必要です。
腎性貧血の症状
貧血が進行すると、下記のような症状が出現します。
- 頭痛
- めまい
- ふらつき
- 疲労感や倦怠感
- 息切れや動悸
腎性貧血の診断と検査
腎機能が低下している方で、ヘモグロビン(Hb)濃度の低下があれば腎性貧血を疑います。
貧血の原因となる他の疾患を除外した上で、エリスロポエチン血中濃度が貧血に見合う上昇がなければ腎性貧血を考慮します。
慢性腎臓病には重症度が定められていますが、Stage3(eGFR 30~59mL/分/1.73m2)で腎性貧血の頻度が上昇し、Stage4(eGFR 29mL/分/1.73m2未満)では頻度が急増すると言われています。
腎性貧血の治療と治療目標
腎性貧血の治療開始基準は、「Hb 11.0g/dL以下」です。
治療目標は
「 Hb 11.0~13.0g/dL(重篤な心疾患系合併や既往時は12.0g/dL以下が推奨)」
であり、血液検査の結果で薬剤の投与量を調整します。
腎性貧血の治療薬は、主に2種類あります。
「ESA製剤」と「HIF-PH阻害薬」です。
ESA製剤
ESA製剤(赤血球造血刺激因子)は、エリスロポエチンの受容体に作用し赤血球の造血を刺激する物質です。
ESA製剤は注射製剤ですが、以下のような種類があります。
- ネスプ(ダルベポエチン)
- ミルセラ
最初は2週に1回皮下投与とし、血液検査でHbの数値を見ながら貧血が改善されれば、4週に1回皮下投与とします。
HIF-PH阻害薬
HIF(低酸素誘導因子)はエリスロポエチンの産生を促す物質ですが、HIFの分解を抑制する物質がHIF-PH阻害薬です。
ESA製剤と異なり、HIF-PH阻害薬は内服薬で、以下のような種類があります。
- ダーブロック
- エペレンゾ
Hbの急激な上昇(心血管合併症や脳梗塞のリスク)や血栓症等の副作用に注意が必要であり、投与開始後は2週間に1度の採血、投与中は月1回の採血が推奨されます。
HIF-PH阻害薬を使用し貧血が改善した時に気を付けるのは、鉄不足です。赤血球を造るために鉄が使われると、体内の鉄が不足し鉄欠乏症に陥ることがあります。
鉄が不足すると血栓症のリスクが上昇すると言われており、「フェリチン100ng/mL未満」または「TSAT 20%未満」の場合は鉄を補充しながらHIF-PH阻害薬を使用します。