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鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血とは

鉄欠乏性貧血は、日本だけでなく世界で最も頻度の高い貧血です。
なかでも、月経のある女性での頻度が高く、月経による出血や妊娠での鉄分の需要増加に伴って貧血が生じます。成人男性では頻度は少ないです。
また、小児期・成長期は、成長による鉄の必要量が増加するため鉄欠乏性貧血が好発します。

鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンの構成成分として必要不可欠ですが、このヘモグロビンは身体中へ酸素を運ぶ役割を担っています。
鉄が不足するとヘモグロビンが減少し、組織へ酸素が行き渡らなくなることで貧血症状が出現します。

症状

他の貧血と同じように、自覚症状としては以下のようなものがあります。

  • 全身倦怠感
  • 疲労感
  • めまい
  • 頭痛
  • 動悸
  • 息切れ
  • 匙状爪
  • 異食症(氷や土を好んで食べてしまうなど)

自覚症状は貧血が急速に進んだときに出現しやすく、ゆっくり貧血が進んだ場合には無症状のこともあり、健康診断で貧血が発見されることも多くあります。

鉄が欠乏する原因

鉄が欠乏する原因は以下があります

  1. 鉄の摂取不足:偏食やダイエット、胃切除後などで胃切除による鉄の吸収障害
  2. 鉄の必要量の増加:妊娠や成長期
  3. 鉄の喪失:月経時の出血や子宮筋腫、消化管出血

月経のある女性や妊娠、偏食など鉄が欠乏する原因が明らかな場合はよいですが、「閉経後の女性」や「男性」が鉄欠乏性貧血を認めた際は注意が必要です。
子宮筋腫などの婦人科疾患の有無の確認、上・下部内視鏡検査でのスクリーニング検査で出血を来たす疾患を除外する必要性があります。

検査・診断

貧血を疑う自覚症状を認めた場合や、健康診断などでHb(ヘモグロビン)低下を指摘された際には血液検査を行います。
鉄欠乏性貧血と診断する際に診断基準となるのが、下記表です。

  Hb(g/dL) TIBC(μg/dL) 血清フェリチン値(ng/mL)
鉄欠乏性貧血 12.0g/dL未満 360以上 12ng/mL未満
貧血のない鉄欠乏 12.0g/dL以上 360以上又は360未満 12ng/mL未満
正常 12.0g/dL以上 360未満 12ng/mL以上

鉄欠乏性貧血では、血清鉄低値、TIBC高値、血清フェリチン低値が特徴的です。
また、トランスフェリン飽和率(TSAT)(血清鉄/TIBC×100(%))も有用な指標です。
TSATが20%未満だと鉄欠乏性貧血の可能性が高くなります。

治療

鉄欠乏性貧血の治療は、基本的に不足している鉄を補うことです。
鉄剤は経口投与と静注投与がありますが、通常は経口鉄剤が第一選択となります。
鉄剤投与で鉄欠乏性貧血は改善できるため、輸血は回避できることが多いです。

以下は経口鉄剤の使用例です。

  • フェロミア:1日100~200mg(1~2回に分けて内服)
  • フェロ・グラデュメット105mg:1日1-2錠(1~2回に分けて内服,なるべく空腹時)
  • インクレミンシロップ5%(鉄として6mg/mL):1日3~4回に分けて内服
    • 1歳未満:2~4mL
    • 1~5歳:3~10mL
    • 6~15歳:10~15mL

※インクレミンシロップは成人に処方することもあります

注意するべき副作用として吐き気や嘔吐、便秘、下痢などの消化器症状があります。
2週間程度内服を続ければ症状は治まることが多いですが、症状が強い場合には投与量の減量や薬剤の変更、飲むタイミングを変更するなどして対応します。

鉄の投与が効くと、自覚症状は早期に回復します。
Hb値が正常化するまでには約2か月かかりますが、Hb値が正常化したからといって治療が終わるわけではありません。
Hb値が正常化することに加えて、血清フェリチン値が正常化することが必要です。

通常は数か月鉄剤を内服すると血清フェリチン値は正常化します。
その後、鉄剤を減量・中止し貯蔵鉄であるフェリチンの低下が認められない場合は鉄剤を中止継続とします。
患者さんによっては月経のために貧血が再発することがあり、閉経後まで飲み続けることもあります。

貧血を疑う自覚症状を認めた際や、健康診断などで貧血を指摘された場合は当院へご相談ください。

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