花粉症(アレルギー性鼻炎)
はじめに
花粉症は国民病と言われるほど近年増加傾向にあり、日本での有病率は約50%と言われています。
埼玉県は他の地域と比較しても特に花粉症の有病率が高い都道府県であり、治療を早めに行うことで日常生活に支障のない程度に症状を抑えることが大事です。
また、以前は小児(3-10歳代)では花粉症は少なかったのですが、近年特にスギによる花粉症が小児で著しく増加しています。
60歳以上では有病率が下がることから、還暦を迎えるまでは寛解しづらい病気であると言えます。
花粉症の症状の特徴
花粉症は鼻粘膜に生じるアレルギー疾患であり、下記の症状が特徴です。
- くしゃみ(突然生じて繰り返す)
- 水性鼻漏(さらさらした鼻水)
- 鼻閉(鼻づまり)
眼の症状や鼻のかゆみを伴うことが多く、他の疾患、副鼻腔炎やアレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎などを合併する場合も少なくありません。
花粉症の原因
その名の通り花粉が体内に入ることで症状を認めますが、花粉の飛散する時期は花粉の種類によって異なります。
- スギ:2~4月
- ヒノキ:3~5月
- イネ科:5~9月
- ブタクサ:8~9月頃
悩まされる人が多いスギ花粉については2~4月頃に飛散し、昼前後と夕方に特に多くなります。
花粉症を予防するために、花粉が飛散しやすい時間帯を避けて外出する、マスクやメガネをつけることで花粉を避けることが大事です。
花粉症の治療
抗ヒスタミン薬
花粉症の主症状の3つのうち、「くしゃみ」と「鼻水」は主にヒスタミンが作用することによって生じるため、ヒスタミンの働きを抑制する抗ヒスタミン薬を使います。
抗ヒスタミン薬は第1世代と第2世代がありますが、最初に開発された第1世代の抗ヒスタミン薬は脳への影響が大きく、眠気や認知機能を低下させるといった副作用があります。
そのため、当院では眠気などの副作用が少ない第2世代の抗ヒスタミン薬を主に使用します。
第2世代抗ヒスタミン薬
商品名 | 一般名 | 自動車運転の注意記載なし | 小児への適用 |
---|---|---|---|
アレグラ | フェキソフェナジン | 〇 | 生後6ヶ月以上 |
ビラノア | ビラスチン | 〇 | |
ザイザル | レボセチリジン | × | 生後6ヶ月以上 |
ルパフィン | ルパタジン | × | 12歳以上 |
アレロック | オロパタジン | × | 2歳以上 |
上記は当院で主に使用している第2世代抗ヒスタミン薬です。
仕事で運転をする人にはフェキソフェナジン(アレグラ)やビラスチン(ビラノア)、小児にはフェキソフェナジンやレボセチリジン(ザイザル)を処方することが多いです。
一般的には抗ヒスタミンの作用が強いほど症状が改善しやすいですが、薬の効果には個人差があります。
そのため、効果に応じて薬の調整を行い、必要があれば眠気などの副作用が比較的生じやすい第1世代の抗ヒスタミン薬であるヒドロキシジン(アタラックス)やクロルフェニラミン(ポララミン)を使うこともあります。
抗ロイコトリエン受容体拮抗薬
鼻閉(鼻づまり)の症状がつよい場合は、鼻の粘膜が腫れる要因となるロイコトリエンの作用を抑制する抗ロイコトリエン薬を用います。
現在2種類の内服薬が存在し、プランルカスト(オノン)またはモンテルカスト(シングレア,キプレス)があります。
即効性は抗ヒスタミン薬に劣りますが、内服を開始して1週間程度で奏効し飲み続けることによって最大限の効果を発揮します。
眠気を起こしにくいことも特徴です。
ステロイド点鼻薬
花粉症の3つの主な特徴である、「くしゃみ」、「さらさらした鼻水」、「鼻づまり」に加え、鼻の痒みなどの症状に効果が強い薬です。
ステロイドというと糖尿病や骨粗鬆症などの副作用が気になる方もいると思われますが、最近のステロイド点鼻薬は鼻で主に作用し、全身への副作用がでにくいことが特徴です。
当院では、フルチカゾンフランカルボン酸(アラミスト)やモメタゾンフランカルボン酸(ナゾネックス)を処方しています。
抗IgE抗体薬
内服抗アレルギー薬とステロイド点鼻薬で効果不十分なスギ花粉症患者さんが適応です。
内服と点鼻薬で症状のコントロールが不十分な方に対しては、アレルギー専門施設へ紹介を検討します。